子どもを取り囲む環境の変化により、近視の発症が増えています。
当院では低濃度アトロピン点眼(リジュセアミニ点眼液0.025%)と多焦点ソフトコンタクトレンズ、オルソケラトロジーレンズの取り扱いをしております。
⒈一次予防として生活環境の改善
一番大事な事は、生活環境の改善です。近業作業距離が短い(20cm以下)と、近視発症リスクが上がる事が言われています。また、屋外での活動を1日2時間することにより近視進行抑制につながると言われている上、より低年齢から屋外活動を行う事により、近視発症のリスクが減ると言われています。
⒉二次予防として近視進行抑制予防治療です
論文、学会などで有効性を検証された結果
①多焦点ソフトコンタクトレンズ(SCL)
ブライアンホールデン眼研究所のEDOF技術(焦点深度を拡張することができる技術により、遠くから近くまで連続的に焦点を合わす事が出来る)を用いた多焦点SCL(EDOF ,1day使い捨て)を用いる事により、網膜の軸上と周辺部網膜への前方のフォーカスを行う事により、近視進行抑制をきたすと言われています。2019年の国際近視学会で近視進行抑制の効果が認められたと報告されました。近視進行抑制効果は30-40%で、下記のオルソケラトロジーレンズと比較して両者間で差はないと言われています。
また当院ではメニコンDUOという遠近両用の2weekSCLの取り扱いも開始しました。こちらは低加入度のSCLになりますので見方がより自然な状態でお過ごしいただけるものとなっております。また2週間の使い捨てレンズとなっておりますのでEDOFの1day SCLよりも費用がお安くなっております。
日中の装用のみになりますので、眼への酸素透過も良いもので、角膜内皮細胞への影響も少ないところ、また、使い捨てのレンズですのでレンズへの汚れがつきにくいためアレルギー症状が出にくいところが利点です。近視度数が強い方でオルソケラトロジーレンズの適応外となっている方に対しても処方できますし、アレルギー性結膜炎をお持ちでオルソケラトロジーレンズの装用が困難な方も近視進行抑制の目的で処方させていただいております。またオルソケラトロジーの治療がある一定の期間が過ぎ、近視進行が収まればこちらの治療に移行する形となります。また、日中に装用していただくものとなっていますので、処方に際してはご自身で装用ができるようになるまで練習が必要になります。
②低濃度アトロピン点眼(リジュセアミニ点眼0.025%)
シンガポールで行われた研究で、5年間低濃度アトロピン点眼をすることによりコントロール群と比較し、60%の進行抑制があると言われました。日本で行われた最近の研究では2年間点眼をすることによりコントロール群と比較し18%の進行抑制があると言われました。現在はアトロピン濃度の違いにより進行抑制の効果に差があるかどうかが研究されているようです。多焦点ソフトコンタクトレンズやオルソケラトロジーレンズとの併用により効果があるとの報告もあります。
当院ではリジュセアミニ0.025%点眼を採用しております。
リジュセアミニ0.025%点眼 費用 1箱30本入 3500円(税別)
検査費用 1000円(税別)
またオルソケラトロジーの検診を受けられている患者様はそちらの検診費用で処方可能です。
③オルソケラトロジー(ハードコンタクトレンズ(HCL))
素材はハードコンタクトレンズであり、就寝中に装用する事により角膜の形状を変型させて平坦化する事により、その日の近視矯正を行うもの(成人で仕事の業種により、日中のコンタクトレンズが装用が難しい人に対しての近視矯正治療)として使用されていました。論文や学会でたくさんの研究により、近視進行期の学童に対して近視進行抑制に効果があると発表されました。作用機序は上記で掲げた多焦点SCLと同様の機序で、数年間装用する事により、近視進行を抑制できると言われています。こちらは自費の診療になります。またオルソケラトロジーの治療をある一定期間させて頂いた方でも、近視の進行が落ち着くご年齢(15歳から16歳頃に)になりましたら、角膜の負担のことを考え、上記の多焦点ソフトコンタクトレンズ、あるいは一般の単焦点のソフトコンタクトレンズへ移行させて頂きます。
オルソケラトロジーは、角膜の形状が一時的に変化しますので、装用した次の日は裸眼でも見やすくなり視力が改善しますが、装用しなければ角膜の形状は元に戻りますので、視力も元に戻ります。オルソケラトロジーレンズは視力を改善させる治療ではないことをお伝えしておきます。
基本的に当院ではまず眼に負担が少ないアトロピン点眼の治療から始めて頂き、それでも近視が進行する方に対して多焦点ソフトコンタクトレンズあるいはオルソケラトロジーレンズの治療をご紹介させていただいていますが、治療のご要望がある方は診察時にご相談ください。
近視進行抑制に関して、聞きたい事、悩んでいる事があれば、まずは当院へ受診してください。
やなぎさわ眼科